池袋で『相続』に強い弁護士なら【弁護士法人心 池袋法律事務所】

弁護士による相続相談@池袋

相続人の中に認知症の方がいる場合の遺産分割

  • 文責:所長 弁護士 田中浩登
  • 最終更新日:2024年11月28日

1 認知症の人が相続人にいる場合は、遺産分割協議は原則できない

遺産分割協議を行うためには、法律行為を行うだけの判断能力(意思能力)が必要です。

しかしながら、認知症の人はこの能力が認められない場合がほとんどです。

また、遺産分割協議は、相続人になる人全員の合意がなければ成立しません。

そのため、「どうせ分からないから」と認知症の人だけ除いて遺産分割協議を行ったとしても、それは無効な遺産分割協議でしかありません。

当然、認知症の人の代わりに署名・押印等をしても同様で、そのようなことをすれば場合によっては私文書偽造として刑事罰の対象になる場合もありますので、絶対にしてはいけません。

つまり、認知症の人がいる場合は基本的に、遺産分割協議を行うことができないということになります。

もちろん一口に認知症といっても、自分では何もできない状態の人もいれば、波があり、一時的にでも判断能力が認められるような人までおり、判断能力が認められるときであれば、遺産分割協議を行うことは基本的に可能です。

以下は、認知症によって全く判断能力が失われてしまった人を前提にご説明いたします。

2 成年後見制度の利用

相続人に認知症の人がいる場合に遺産分割を行うために使われる制度として、成年後見制度というものがあります。

認知症など、何らかの理由で意思能力を失ってしまった人(成年被後見人)の代わりに、成年後見人という人が判断し、遺産分割協議などの法律行為を行うことはできるという制度です。

成年被後見人は基本的に、家庭裁判所に対する請求によって後見開始の審判を行うことができます。

成年被後見人を付けるための請求は、その認知症となっている人の配偶者や四親等内の親族などの請求によってすることができるため、遺産分割協議を行いたいという親族の人が家庭裁判所に請求することができます。

成年後見人になるのに、特に資格等は不要ですので、身近な親族が選ばれるケースもありますし、弁護士などの法律の専門家が選任される場合がありますが、他の相続人が成年後見人になってしまいますと、利益相反等の問題が生じ、遺産分割協議が困難になってしまいますので、注意が必要です。

成年後見人が選任された後の流れとしては、他の相続人から成年後見人に対し、遺産分割の申し入れがなされ、認知症の人の代わりに成年被後見人を加えた相続人全員で被相続人の財産をどのように分けるか協議し、合意に至った場合は遺産分割協議書が作成されます(基本的に、認知症の人の成年後見人として成年後見人の署名と押印がなされます)。

そうして、作成された遺産分割協議書を利用して相続手続きを進めていくことになります。

3 成年後見制度の欠点

成年後見制度を利用するにはリスクもありますので、これらのリスクを念頭に置いたうえで、制度を利用するか検討するべきです。

⑴ 遺産分割の内容が自由に決められない可能性がある

成年後見人は、意思能力を失ってしまった成年被後見人のために手続きを行う人であって、遺産分割を行いたい人のために活動をする人ではありません。

むしろ成年後見人は成年被後見人の財産を守るためにその活動を行わなければなりませんので、本来、意思能力があったのであれば、その認知症の人が融通を聞かせること(譲歩して相続する分を少なくするなど)ができたところを、あくまで法律上認められた分を成年被後見人に残そうとしてそのような合意ができないという可能性があります。

⑵ 手続上の負担

成年後見人の選任には、家庭裁判所への申し立てが必要なことは先のとおりですが、ただ、請求すればいいというものではなく、そのために必要な戸籍等の資料の収集や書面の作成をする手間や申立に係る費用などもあります。

参考リンク:裁判所・後見開始

また、多くの場合は準備から考えれば数か月かかかることもあるため、長期間その手続きに拘束される負担を負いられることになります。

⑶ 成年後見人への報酬負担

申立て費用以外にも、成年後見人に専門家が選任された場合、成年被後見人への報酬を支う必要があります。

その報酬は基本的に、成年後見人が管理する成年被後見人の財産から支払われますが、月数万円程度の費用がかかります。

また、成年後見人は選任されれば、基本的に外れることはありませんので、その負担がずっと続くことになります。

また、遺産分割協議以外でも、その認知症の人の合意が必要な手続きについては、その成年後見人の合意が必要となることになります。

遺産分割協議にとどまらない影響があるということです。

  • 選ばれる理由へ
  • 業務内容へ

弁護士紹介へ

スタッフ紹介へ